アイドルマスター シンデレラガールズコンプリートアニメファンブックに関して

 読んだ。この数年で久々にドハマリしたシリーズの一区切りがついた感じだ。

 
 内容に関してはとてもとても贅沢な不満はある。CP以外のアイドル達の役者のコメントがほしい。346プロの設定、美城専務、今西部長、そしてCP担当プロデューサーといったアニメオリジナルキャラクターの設定がみたい。重要な話数だけでなく全話に高雄監督コメンタリーがほしい。キャラクターデザインの松尾さんや作画監督に各アニメーターのこだわりが見られたカットの解説がほしい。挙げていけば限りがない。
 
 だけれどもこのファンブックを買って損をしたなんて私は全く思わないし、むしろ大丈夫か?この密度に対して利益薄くないか?ともっと金を払ってもよかったのではと思っている。
 
 脚本、演出、衣装設定や撮影スタッフへのインタビュー、高雄×錦織の監督対談、松尾×赤井の対談。見てみたいと思っていたものからここまで掘り下げてくれるのかという企画まで本当に充実したラインナップだった。コンプリート「アニメ」ファンブックと銘打つだけのものは間違いなくあった。数多くのスタッフがインタビューに答えてくれたこと、そのスタッフにインタビューをしようと企画した人がいたことは一ファンとして感謝の念に堪えない。
 
 
あとはそれぞれの本の感想と自分用の総括を書いておく。
 

感想

・アニメファンブック

 結構前に予約してたため書き下ろしがボックスだけと思ってたので箱から出したときに書き下ろしの表紙が出てきてたまげた。え、まさかの書き下ろし?うわ、みりあちゃんめっちゃ良い……笑顔です……ってなってから楓さん!?楓さんがいるん!?ってなった。十三話のあのシーンじゃないんだけどアニメが終わってみんな一息ついてるって感じな絵がこう胸に沁み入ってくるよね……。
 
 構成としてはキャラクターデザイン設定と声優インタビュー、各話の設定解説、スタッフインタビュー、設定画やアート集。
 インタビューはシンデレラプロジェクトの面々と担当プロデューサー役の武内さん。基本的には印象にのこったことや歌ってみたい曲、キャラクターへの一言を聞いている。
 赤城みりあ役の黒沢さんがセンター試験との両立を語っていてすげえなって感じた。武内さんもそうだったんたよな……。
 松嵜麗さんのきらりに対する理解度や内田真礼さんの蘭子への自己表現に対するエールはキャラクターを本当に生きている存在として掴んでいるんだなと思わされた。うーんすごい。
 一番印象に残ったのは武内さんのプロデューサーに対する一言で「お疲れさまでしたはまだまだ先です」って言葉だった。いまだにプロデューサーのキャラクターとシンクロできていないという彼だからこそ向き合おうという気概を感じる。
 
 各話の設定解説に凜ちゃんの家族が出てきて驚く。お父さん、ハードボイルド過ぎません?お母さん、絶対昔やんちゃしてましたよね?
 
 高雄監督の紙上コメンタリーは見応えがあった。現実味より演出効果を重視したケレン味のある画面づくりはそのぶんキャラクターの生っぽさを中和してちょうどいい案配に落ち着いたのではと個人的に感じた。あと時計を重要なモチーフにしたこと、「シンデレラ」というキーワードがやはり原作からも提示された重要なテーマだったということも改めて確認できた。未央の部屋の設定に関しても彼女の性格を掘り下げてそれを反映させるあたり並々ならぬ情熱を感じさせる。
 
 
 錦織監督との対談はこのファンブックのなかで特に見応えのあるものだと思う。錦織監督の語る自分と高雄監督との作品造りにたいする感性の違い、新たなプロデューサーのキャラを提示しそれを通した胆力、そしてあのキャラに行き着いたロジックをこの対談で引き出したのはとても重要だった。美城専務についての話も非常に興味深い。彼女が今までのシリーズにある「自分らしさ」をプロデュースするのではなく用意した形でプロデュースする方法をとっていること、そしてあくまで社内であり分かりやすい敵ではなく一つの方式でしかないこと。だからこそ彼女が最後のシンデレラだということ。錦織監督が専務とプロデューサー同士でケリを付けなかったことを納得できたと語ったのはこの対談があったからこそではないだろうか。ある意味で錦織監督と高雄監督は美城専務とCP担当プロデューサーのように方法論の違いを語っていたように思える。
 
 この後に松尾×赤井の対談とシリーズ構成と脚本のインタビューがあって見応え抜群なんだけど個人的には助監督インタビューとアニメーター対談が白眉だった。
 助監督っていいながら助監督の仕事って結局なんだったんだろうという身も蓋もない話から監督の絵コンテが小さかったり監督はタフって話も好き。そして舛成さんはすごい。
 アニメーター対談は十三秒泣かせる演技を描いた話がやっぱり難しいんだなと。監督の全部娘だ!って話やミクにゃんのおしり振りすぎた話も笑えた。インタビューで出てきたカットをまとめて載せてるページだけど4話カット35のリカみりあに対する脅威の情熱を感じる原画はどこで話題になってたのだろうか。見落としてしまった。
 
 CP担当プロデューサーの初期案は武仁奈派大歓喜じゃない?あと老けてない?美城専務、悪役顔すぎじゃない?ヒーヒッヒッヒって笑わない?
 
 武楓?ハーブでも決めてるんじゃないですかね?って公式からの圧力を感じる。なにもない。おかしい。こんなことはゆるされない。
 
 

・絵コンテ集

 これはもう見なきゃ分からん。でも一話の絵コンテはもうこれだけでも面白いって思わされた。でもあの卯月の笑顔は担当原画と撮影いい仕事しすぎた。改めて絵の力を思い知らされる。
 

・お疲れさま本

 これも見なきゃわからないよね。監督が第九話好きすぎて笑う。舛成さんはやっぱすごいな!あと赤井さんが全員にコメントつけてて面白かったと同時にどういう経緯で?ってなった。よくやった。美城社員の家族写真は笑わざるを得ない。あと体重激変してる人多くない?大丈夫ですか?
 
 

総括

 ありがとう。いやもう感謝の言葉しかない。よくやった。
 今回のファンブックを通して高雄監督の熱量を再認識できた。原作に対する敬意、深い掘り下げ、細やかなディテールにまで拘った作品作り。全部娘だと断言できる監督だからこそ、それぞれのキャラクターへの愛情がしっかりと感じられる、いや一人ひとりが生きている人間として敬意を感じる作品になったんだと思う。この人だからこそ、この物語を作れたんだと言える。でも身体には気をつけていただきたい。
 
 ここ最近アニメどころか映像作品全般から遠ざかっていた自分がここまではまったのは本当に久しぶりだった。全巻予約して杏仁豆腐先生のキャンパスアートもゲットでき、シンデレラの舞踏会はチケットを発行した翌日になくしてしまい血の涙を流したのもまるで昨日のことのようだ……。
  凜じゃないけど一話のあの卯月の笑顔で打ち抜かれた。一話の完成度は恐ろしく高かった。スタッフの話の中でも高雄監督の色が一番色濃く出ている話として挙げられている。でもだからこそあれは監督だけじゃなくスタッフ全員の力なんだと思った。あの一話があったからどんな展開になっても間違いなく卯月を最高に輝かしてくれるって確信できた。もちろん期待を超えてそれは実証してくれた。
 
 
 この記事を書いてたらあのアイドルマンガのモノローグを思い出した。
 
「彼女たちの夢の続きが見られるなら一万円は安すぎる。」
 
 もちろんこれの売り上げが続編への影響を与えるかなんてわからないけど、それでも自分にとってファンブックの値段4500円は安すぎる。バカな信者なんだろうけど幸せしかもらっていないからいいんだ……。
 
 お疲れさまはまだ早い。二十五話の最後のようにシンデレラガールズになった彼女たちの未来はまだ白紙。夢の続きが劇場でみれることを星に祈って待ってます。